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zoom RSS 東海道物流新幹線だが、建設費はなんか怪しい

<<   作成日時 : 2008/06/05 21:47   >>

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「東海道物流新幹線構想委員会」が突然ぶち上げてきた第二東名、新名神に貨物新線を併設するという構想ですが、真面目に読むと、いくつか怪しい。

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D0406P%2004062008&g=MH&d=20080604
http://mainichi.jp/life/money/news/20080605k0000m020084000c.html

一般財源で作るのは構いませんが、全国民に利益があるというのならば、全国民の税金を上げるのが筋というものでしょう。特定財源は「必要だから利益を受ける人からお金を集める」のが建前であり、余るのなら税額を下げるのが筋です。第二東名に貨物列車を走らせると全国民に利益があると胸を張って言えるのなら、「それにはこれだけの金がかかるから、その分消費税を上げる必要がある」と何故言えないのでしょうか。ていうか、自動車を保有・使用すると結構な割合で今でも一般財源に入っているのです。

そもそも新名神は一部開通、第二東名の静岡県内区間などは開通時期が見えてきた今になってこんなことを言うのは、降って湧いた特定財源という金の成る木にたかっているだけにしか思えません。なぜもっと早く、京都議定書の発行、道路公団民営化などの時期に出してこないのでしょうか。


まあそれはさておき、1.77兆円ってのが実にうさんくさい。

第二東名、名神に関しては民営化前の猪瀬の建設費削減案がどこまで反映されているのか分かりませんが、実はこの案当時の平成15年度以降の建設費削減額が1.77兆円です。

http://kantei.go.jp/jp/singi/road/kondankai/050204/siryou2.pdf

しかし、この新規格には複線の線路を敷く場所はありません。つまり、規格を旧規格に戻して用地を作るというのが前提になります。しかし、これが1.77兆円の根拠では線路を敷く金は1円も出ませんね。とりあえず建設は旧規格で行われているとしましょう。つまり1.77兆円削減案は無視されたという仮定です。実際、新規格で作っているのかも分かりませんし。

重量貨物列車を100km/h以上で走らせるための路盤工事や電化設備の敷設だってkm当たり数億円はかかり、500kmほど作るのなら数千億円にはなるはずです。

最初の問題は東京側の起点です。第二東名高速道路は現時点では圏央道との海老名JCTまでしか計画が無く、一応は外環とのJCTが起点ですがそこまでの計画は決まっておらず、そもそも外環の中央道−東名間はいつになったら着工できるのかも分からない状態です。

まさか海老名に巨大な貨物ターミナルを作るわけにも行かないでしょう。そんな用地はどこにもありませんし。よって横浜羽沢駅や東京貨物ターミナルまで貨物線を敷くことになるでしょう。なにしろ1日20万トン輸送です。1600t貨物列車で本当に運んでいるのは2/3の1100tくらいですし、積載効率を7割くらいと見込めば130往復は必要です。既存の線路に潜り込ませられるはずはありません。では新線建設の場合、海老名から大井町あたりまでは40km強あります。60km程度のTXの建設費が1兆円を越えているのですから、駅が無い代わりに延々と市街地を走ることを考えると、用地費だけでもたいへんです。ここだけで1兆円はかかるでしょう。

25‰勾配を許容すれば、裾野JCTあたりから御殿場線に入って、国府津から東海道貨物線に入るという手は使えます。いずれにせよ現状の御殿場線の施設のままでは話になりませんから、(用地だけはあるが)複線化を含む大規模な改良が必要になります。全くの新線建設よりは安上がりでしょうけど、1300t牽引とかになると160往復設定とかになるので東海道貨物線がパンクしかねません。


名古屋や大阪の貨物ターミナルまでの線路も必要ですね。ていうか伊勢湾岸を通っている名古屋や大阪の既存の貨物ターミナルは近いと言えば近いですが、今でさえ手狭ですからまず使えないでしょう。と言って、違う場所に作ると言っても、名古屋はいいですが、大阪市街から遠く離れた山の中を通る道路ですから、やっぱり都心への貨物線建設費は数千億円のレベルになるでしょう。

しかも出発地から貨物駅、貨物駅から目的地へは道路を走るのですから、貨物ターミナル周辺道路は地獄絵図になるでしょう。必要となる3大都市圏の貨物ターミナルの拡張とターミナル周辺の道路工事も数千億円の単位になるはずです。

次に道路自体の規格です。縦断面勾配の規格は2%、要するに20‰です。早い話が瀬野八並の勾配を許容しているということです。ていうか、道路の構造は1000t超の貨物列車の荷重に耐えられるのでしょうか。20‰からの勾配が含まれる線路を1000t以上の貨物列車が平均速度100km/h近くで走るのですから所要となる出力は6000kWは必要でしょう。これが130往復です。直流電化はきついでしょうね。交流電化にしても必要な電力施設は莫大なものになります。

保守間合いを4時間とって130往復走らせるということは9.2分間隔で走ることです。所要時間6時間想定ですから、同時に走っている列車は約80本、各列車が6000kW消費ですから48万kWの電力が最低限必要です。中規模の発電所が専用に一個必要ですね。


これらが1.77兆円で可能なのでしょうか。

用地買収や高架橋やトンネルなどを専用に作らなくていい(代わりに1.77兆円削減案が消える)とは言え、鉄道用路盤や線路設備は丸ごと必要です。本体以外に所要となる大都市圏のインフラ整備で軽く2兆円はかかるのではないでしょうか。とりあえずこの額の根拠を知りたいところです。



次に、経済効果3.6兆円/30年と言いますが、収入減少の一面も見ておかねばなりません。

年300万トンの二酸化炭素放出が減るという計算です。
(トラック輸送のエネルギー)−(貨物列車に要するエネルギー)=300万トン分
になるのですが、第2項を無視しましょう。トラックが使うはずの軽油量をざっと評価してみます。

軽油の分子式は一定ではなくC11〜16Hmで、分子量は平均200くらいです。CO2の分子量は44です。300万トンをそのまんまの数値で考えるとして、3×1012gですので、発生するCO2は6.8×1010molということになります。平均して軽油の分子式をC13.5Hmとすると、萌える軽油は5.1×109mol、すなわち質量は1.0×1012gということになります。軽油の密度は0.84g/ccですから、消費される軽油は1.2×109リットルということになります。

軽油引取税は32.1円/Lですから、上記の軽油が消費されないということは、軽油引取税は386億円程度減るということです。実際には貨物列車の消費量分も考慮する必要があるので、軽油引取税収の減少は400億円は越えるでしょう。

トラックの燃費を1.5km/Lとするとトラックの走行距離は1.8×109km減少します。(走行距離500km、20t/台積みとすると1日20万トン輸送になる) 大型車の通行料金は35円/kmくらいとすると、通行料金収入の減収は630億円くらいです。深夜割引の寄与は不明ですので考慮しません。軽油にかかる消費税はリッター100円として年60億円くらいですから年間で税金と通行料金合わせて1100億円以上の減収にはなるでしょう。

1日20万トンということはトラックを20t積みとして1万台、半分減るとして5千台保有減です。自動車重量税は12600円/tですから、総重量25tとして16億円くらいの減収、トラックを全部営業用として、自動車税は(20-8)×4700円ですから、2.8億円で合計約19億円/年の減収です。こっちはゴミみたいなものですね。

全部足して年間の減収は約1100億円ですから、30年での減収は3.3兆円です。経済効果並の減収になる可能性があるのです。ていうか軽油使用量削減がなんで経済効果になるんだ?石油関係企業にとっては売り上げ減少になるんだから、むしろマイナスじゃないのか?


二酸化炭素削減を錦の御旗に掲げるのならば、やはり一般財源の増税を正面から主張すべきでしょう。少なくとも第二東名名神を走る自動車は「通行料金」の形で建設費を負担するのです。通行料金で建設費を賄いながら、そこを走るのに使うガソリンにもガソリン税がかかっているのですから、実質二重負担をしているという批判もあるくらいです。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
お邪魔します。
 自分には何か東海道物流新幹線は「超巨大な"新交通
システム"」のようには思えます。道路にはバスでもト
ラックでも自家用車でも二輪でも自由に走れるといった
"汎用性"がありますが、線路は自動車は走れず(DMV以
外)、かつダイヤグラムに沿って走らせなければなりま
せん。専有だから"最適化"できるという利点はあります
が(例:250〜300キロで1時間当たり3本)。かつて
トラックを連結またはコンピュータ制御で連結した貨物
列車のように走らせるというのを見た事があります。そ
れをプラグインハイブリッドの延長(?)で外部の電力
で走らせる「ロードトレイン」のようなものの方が良い
のではと思います(必要なら車も走らせられる等)。
ブロガー(志望)
2008/06/21 20:50
複数車両を走らせる方法としてはIMTS方式もありますから、可能性はあると思います。
ただ、現状では長距離の電気運転を可能にするだけの安価な電池が無いわけですから、外部電源を使えるという鉄道のメリットをJR貨物が放棄することはないでしょうね。
赤い砂兎
2008/06/22 18:27
財源や技術的な問題はあるでしょうね。
でも、トラック運転手の人手不足といった労働問題の点からも、この構想について考えていく必要はあると思いました。
とおりすがり
2010/07/30 19:18

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